≪ ロベルトカヴァリ | PR through the web「Webを通じたPR」 ≫
October 11, 2009 9:31 PM
少し前のエントリーにも書いたように、多くのラグジュアリーブランドはこの5、6年の世の中の変化に対応できていません。結果、不況により顧客離れが加速し、産業自体が収縮しています。時代の変化に順応できなければ需要が回復する事もありません。そればかりか、情緒だけに語りかけるビジネスモデルは継続的な投資を必要とし、顧客の世代交代が出来なければ破綻してしまいます。今、急速に世界に取り残されつつあるラグジュアリーブランドが必要としているのは何なのでしょうか?
・顧客との接点を失ったラグジュアリーブランド
ラグジュアリーブランドの衰退の大きな理由はビジネスモデルの体系化にあります。雑誌や百貨店との密接な関係を通じて一般層の消費を促し、ラグジュアリーをあたかもスタンダードなものにしてきました。しかし、インターネットの普及とともに消費者の情報収集や購買行動が多様化し、情報発信や販売が少数の特権では無くなりました。お互いからの情報を大量に取り入れた消費者はラグジュアリーに対して急激に冷めていきます。そしてもちろん、不況がこれを大きく加速させました。結果、雑誌や百貨店はその影響力を失い、完全に依存をしていたラグジュアリーブランドは顧客との接点を失ってしまいました。
・メディアや店舗を介さないダイレクトチャネルへ
そう考えれば課題は明確です。ラグジュアリーブランドは新たな消費者接点を築かなければいけません。雑誌や百貨店に頼らず、ブランドが消費者に対するダイレクトなチャネルを持つ必要があります。広告やイベントの効果が無くなり、今までPRと呼んでいたプレスリレーション的な仕事が売り上げに結び付かなくなります。PRの本質は第三者の客観的かつ自主的な情報発信を通じたブランド創りであるため、消費者自身が情報発信力を持ち、個人を詳細にセグメントできるWebの活用は極めて重要になります。細分化された顧客データベースを確立し、ダイレクトマーケティングを行う。そして卸しや店舗販売などよりも格段に利率の良いECを通じて売り上げを維持する。時代の変化は販路の変化なのです。
・並行輸入とアフィリエイトの氾濫
ラグジュアリーブランドを検索すると並行輸入業者のECやアフィリエイトが目立ちます。ほとんどのWebサイトが海外の制作会社によって作られたフルFlashなもの。日本語の複数キーワードでの検索にはほとんど対応していません。つまり、インターネット上で並行輸入品を売る際はキーワードが取り放題と言うことです。未だに具体的な対策がされないまま、どのブランドからも放置され続けている問題ですが、売り上げのシェアを大きく奪われたことだけが問題ではありません。消費者のインターネット利用時間が増加し、メディアとしての重要性が高まる中、既存メディアを通じた消費者との接点が失われ、コミュニケーションが困難になりました。ブランドを知ってもらえず、その付加価値や情緒ベネフィットが伝わらず、安売りだけの情報が目の前に溢れていたらブランドのイメージはどうなるでしょうか?インターネットを主な情報源とする世代はラグジュアリーブランドの価値を知ることが出来なくなってしまったのです。
・非日常をよりアクセシブルに
しかし、ラグジュアリーブランドの需要が無くなった訳ではありません。どんな時代にもラグジュアリーが提供する情緒ベネフィットは魅力的なものです。ただ、そのコミュニケーションの経路が変化しただけです。ラグジュアリーブランドが提供する「非日常」というものを雑誌の中だけでなく、よりアクセシブルにする必要があります。例えばファッションショーやイベント。これらは本来顧客を招待し、高額の受注を獲得するためのものでした。そこにプレスやセレブが招待され、今の屈折したモデルに変化していきます。ブランドは雑誌から一定の評価を得るためにこのようなイベントを行うようになりました。数枚の写真を載せてもらい、パブリシティを獲得するためだけにイベントを行う事にこの先も意味はあるのでしょうか?
そんな中、今シーズン、BurberryとAlexander McQueenが消費者に向けてショーをライブで公開しました。破綻寸前のモデルを根本から問い直すものではありませんが、消費者にダイレクトにショーという体験を届けた点は大きく評価する事ができます。
Webは所詮情報です。雑誌に比べてラグジュアリーとは縁遠いものかもしれません。しかし、映像や音楽、消費者同士のコミュニケーションなど、紙メディアには実現不可能な要素がたくさんあります。そして何より現在ほとんどの消費者に対してアクセシブルです。確実に「届く」メディアをフルに活用し、ブランディングを行う。販売だけではなく、PRやブランディングのWebへのシフトも自然な流れだと思います。
・ラグジュアリーを必要としないデジタルネイティブ世代
これから経済の中心になろうとしている世代はインターネットと共に成長してきました。その利便性と豊富な情報量を当たり前とし、マス媒体に左右されない消費に対する独自の価値観を持っています。更に、この世代は不況しか知らず、ラグジュアリーの知識はありません。自ら価値を理解し、納得しなければ消費は行わないこの世代に、どのようにラグジュアリーブランドの価値を教育する事ができるでしょうか?
片や、コンシューマーブランドは生産の質を上げ、メディア投下量を増やし、イメージに膨大な投資をします。機能ベネフィットをアピールし、ロジカルなマーケティングを通じてこのデジタルネイティブ世代の支持を伸ばし、本当のラグジュアリーを更に不要なものとして位置付けるでしょう。元々、日本はラグジュアリーブランドの出番などがとても少ない国です。冠婚葬祭以外のパーティーは少なく、リアルな「需要」はありません。そんな日本をブランド大国にしたのは強い「同調性」による一般層の消費です。このラグジュアリーブランドを支えた「同調性」は今後逆の方向へと作用するでしょう。誰もが持たなくなれば、また一つ、買う理由が無くなるのです。不況によって消費者が成熟した今、本当の価値を正しく伝えなければ何も売れるはずはありません。
・新たな価値の創造という課題
ラグジュアリーブランドは直ちにWebへとシフトするべきです。Webブランディングを通じ、新たな顧客層へブランドの価値を伝えます。WebPRを通じ、消費者にダイレクトに話題を届け、利率の高いECを通じて販売を行うべきです。しかし、このような変化は従来のラグジュアリーブランドの魅力を大きく減少もさせます。雑誌を読み、買い物に出掛け、ブランドロゴの入ったショッパーを持つ。そんな楽しみは無くなります。ラグジュアリーブランドには新たな価値の創造という課題が残るのです。それは正に原点回帰。少数の顧客にきめ細かいサービスを提供していた時代に戻るべきなのです。顧客一人一人に対するテイラード・コミュニケーション。個別のニーズにに応え、精神的な満足を提供する。そんな顧客中心のビジネスモデルへと戻る必要があります。しかし、ただ昔に戻るだけでは今のビジネスの規模を維持することはできません。顧客の詳細なデータベースと自動化されたダイレクトマーケティング(E-CRM)を通じてより多くの人に「個」の対応を提供するのです。
ラグジュアリー業界全体の収縮を歓迎するブランドはありませんが、同時に全てのコンペティションの低下も意味します。適切なWeb戦略の有無が単なるアドバンテージではなくブランドの存続を決定づけるようになる前にPR、ブランディング、販売、そして顧客管理をWebへとシフトさせる必要があります。
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