考察 |

バビィとの約束

May 28, 2010 2:21 AM

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アフリカから帰国して2週間。まだ毎日色々と考えさせられます。特に現地で知り合った友人の言葉。今日は少し振り返って、彼の話をさせて下さい。

バマコからガオ、そしてモプティまでの長い道のりを休みなく運転し、私たちを無事に帰りのフライトまで送り届けてくれたバビィ。今回の旅では彼との会話が最も刺激的だったかもしれません。マリの人々のフランス語は非常にシンプル。彼は現地のバマラ語に加え、第二外国語でアラブ語、そして第三外国語としてフランス語を話します。この外国語を話せることが職を与えてくれたと言い、彼はその発言の後に「DIEU MERCI」(神に感謝)と付け加えました。

バビィは私と同い年。1978年生まれ。32歳で2人の女の子の父親です。彼に子供の事を聞くと「最初の娘は死んだ」と簡単に言いました。5歳未満の子供の致死率が2割のマリでは珍しい事ではないのかもしれません。しかし、「モスクでお祈りを続けたら、二人の娘を授かった、DIEU MERCI」と嬉しそうにも話します。バビィ曰く、娘は嫁に行った後も父親を忘れないそうで、マリでは娘が多い方が幸せになれるとの事です。彼はバマコ(マリの首都)でツアー会社の運転手として働き、金曜の夜に(家族と週末を過ごすために)セグゥの家まで6時間夜行バスに乗って帰ります。バスと言っても大型の相乗りカー。途中何台も見かけましたが、その旅は過酷そうです。

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マリの失業率は30%程とされていますが、それには破綻した農家や、路上で果実などを売る人々は含まれていないそうです。実際、安定した給料を得ている人は5%程度だと言います。「DIEU MERCI、私は給料をもらう仕事につくことが出来た。でも家族に使えるのはその半分だけ。」社会保障が存在しないマリでは給与の半分を地域の知り合いや職のない親戚に渡す習慣があるそうです。マリの人々は政府からインフラを提供されず、自ら社会を守るシステムを作り出しているのでしょうか。

セグゥで店を営んでいるというバビィの奥さんは仕事と育児を両立させ、忙しい亭主の帰りを毎週待っています。平均年収が6万円程度のマリでは共働きに加え、農業による自給自足も必要だそうです。そんな過酷な人生をバビィは「幸せ」と感謝しています。17歳から始めた運転手の仕事を褒められると少し照れくさそうにしていました。

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そんなバビィはタバコを吸います。車内でタバコの話題になると、「体に悪い事はわかっているが、モスリムにはこれしか許されていない」と険しい表情になりました。「マリには何も無い、何も持っていない人たちで溢れている。でも政府は何もしてくれない。」彼は少し苛立った口調で助手席の私に言いました。「これはお前にとって教訓であって欲しい。これを伝えてくれ。」

バビィは運転手として多くの観光客をマリの貧困地域に連れていきます。「いつもは観光客が写真やビデオを撮れるようにゆっくりと走るんだ。」貧困が観光資源となっている事に対して怒りを感じているようでした。「何も持たない人たちを見ると涙が出る。でも俺には小銭をあげることしか出来ない。これがアフリカなんだ。」彼はその無力感から不眠症に陥っていると言います。「夜、この国の事を考えると眠れなくなる。だからタバコを吸って忘れるんだ」、と。

その後、彼に連れられて私が見たものは生と死の狭間のような場所で生き延びる人々でした。そして夜には同じ無力感と不眠が私にも襲ってくるようになりました。ひとりの活動では何も変わらず、企業、政府レベルでも全く足りない地球レベルの問題に直面してしまうと、押しつぶされる気持ちになるのでしょう。そんなことが伝えられればバビィとの約束も一つ果たせたことになります。


1l for 10l プログラム マリツアーを終えて

May 15, 2010 3:53 AM

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1l for 10l プログラムのマリ共和国視察ツアーに参加させて頂きました。マーケティング施策として非常に注目されている活動ですが、実際の支援活動や現地の状況は簡単に想像できるものではありません。今回は自分の目で確かめるという非常に貴重な機会を頂きました。飛行機を3回乗り換え、車で2000キロ以上を走破するという非常にハードな内容でしたが、多くの事を学ぶことが出来ました。

後発開発途上国の人々がどのように食し、暮らしているか。そんな事は最近まで私の現実の外にあるものでしたが、ここではその人々と手を握り合い、直接話をしました。彼らが最低限のライフラインを維持するための体制も提供されず、何も無い土地で自給自足を強いられていることにショックを受けました。マリには農業が成立していない地域も多く、失業率は公式な数字よりはるかに高いとの事です。しかし、イスラム教徒が9割を占めるこの国では自身の収入の半分を周りの人々に分け与える習慣があるそうです。国や経済が機能しない事に対する人々の自衛策のようにも思えます。私たちを5日間に亘って色々な村へ連れて行ってくれたドライバーのバビィは「水も、食べ物も無い人々を見て涙が出るが、私には小銭をあげる以外何も出来ない」と嘆いていました。

マリでは、昨年の干ばつで多くの家畜が死に絶え、飢餓の恐れに直面する国民も多く存在します。今年、また干ばつが起これば、この国は壊滅的な打撃を受けるでしょう。私達が訪問したドロ村もユニセフ職員曰く、「非常に危険な状況にある」との事でした。

今回の訪問で私から答えは出ません。ただ、現実を無視して生きることも出来なくなりました。バビィと同じく無力さに押しつぶされそうな気持ちですが、これから少しずつ自分に出来ることを探していこうと思います。

今年ももうすぐ1l for 10l プログラムが始まります。

チャアラ村とペットボトル

May 14, 2010 5:33 AM

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今日は1l for 10lプログラムで手押しポンプの井戸が設置されたチャアラ村を視察しました。きれいな水があるという事で、ここの子供は笑顔に満ちている印象を受けました。安全な水へのアクセスが住民の健康を支え、その健康から教育や開発が進むのです。チャアラ村では歓迎セレモニーが行われましたが、そこでの市長の言葉が印象的でした。「水と教育無しでは人生は無い。」昨日のドロ村の村長の「ここには何も無い」という言葉を思い出しました。

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住民の健康状態も向上しているようで、ドロ村で見られるような慢性的な下痢や腹痛は無くなったとの事でした。チャアラ村はドロ村より比較的南に位置し、若干豊かではありますが、洗いたての服を着た子供たちは比較にならないほど明るい笑顔を浮かべていました。

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水が出たとはいえ、チャアラ村にも資源はありません。私は子供たちがユニセフの職員から空のペットボトルを貰いに並んでいるのを見かけ、気がつけば私もペットボトルを欲しがる子供に囲まれていました。

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ペットボトルを手に入れた子供に近寄ると、怖かったのか、泣かれてしまいました。見慣れない東洋人に怯えながらもペットボトルを大事に持つ子供と、ペットボトルを巡って喧嘩をする子供達。私たちにとってはゴミでも、彼らにとってはやっと手に入れた大切な水を運ぶ水筒なのでした。

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ズィデッタとの出会い

May 13, 2010 8:31 AM

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そこで汲み上げた水を飲む1人の少女に出会いました。彼女の名前はズィデッタ。7才くらいでしょうか。沼の水をろ過せずに飲むリスクをよく理解していないのか、それだけ喉が渇いているのか、汲みたての沼水を直接飲んでいました。なんでもこのドロ村では下痢や腹痛などの症状が慢性化していて、子供もそれが病気だとは気付かないそうです。他にも頭痛や目の病気を訴える住民も多く、子供達の中にも明らかに目に疾患抱える子が目立ちました。濾過されていない沼水にはメジナ虫などの寄生虫も含みますが、「メジナ虫の苦しみは渇きの苦しみの比ではない」と住民はリスクを承知で危険な水を飲み続けています。

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水が無い苦しみの中でも明るく、笑顔で接してくる子供達の中でもズィデッタの瞳は印象的でした。不衛生な水によってこの瞳や小さな体が病に侵される事を想像すると耐えがたい気持ちになります。

渡航前に頂いた注意書きの中に「現地の人に見えるところでは水を飲まない」と書かれていました。50度以上の気温と直射日光の中、私はたまらず車に駆け込み、冷えたミネラルウォーターを飲みました。今は車の中でこのエントリーを書いていますが、足元には温くなったペットボトルに水が残されています。

私たちは毎日どれだけ、彼女たちが必要としているものを捨てているのでしょうか?

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水のない村、ドロ

May 13, 2010 7:43 AM

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ガオ市長への表敬訪問を終え、130キロ離れたドロの視察を行いました。サハラの砂に囲まれたこの村が直面する最も大きな問題は水。村長は強い口調で「ここには水も、金も、農業も無い。何も無い。」と言い、牧畜の為にわざわざガオまで買いに行くという藁を見せてくれました。

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村の中心から徒歩で5分ほど歩くと雨季には沼地になるという荒れ地が広がっていました。そばにある井戸も昨年の干ばつで枯れ、自由に水汲みを行うことはできません。土の混じった少ない水を分け、運ぶ住民たちにとっては荒れた沼地の底に溜まったわずかな水が命綱となっているのです。

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沼地にはいくつかの井戸が掘ってあり、集落毎に採水の権利を持っています。木で囲われた井戸に人が降り、水を汲み上げるのです。その水は一度汲み上げるとすぐに枯れてしまい、また水を汲むには3時間ほど待つ必要があるそうです。住民はそれを繰り返し、時には数十キロも離れた民家まで水を運びます。

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FICC inc. 代表取締役社長 荻野英希。国内外でのデザイナー、アートディレクターとしての勤務を経て、2004年にFICCを設立。外資系ブランドのWEBコンテンツの企画、制作、運営、マーケティングから戦略的なプロモーションまで、総合的なプロデュースを手がける。

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