May 29, 2010 7:40 PM
今やブランドがソーシャルメディアに公式のコミュニケーションチャネルを持つことは珍しくありません。そもそもソーシャルメディア上の対話に参加すべきでない(または必要のない)ブランドも多く含まれているとは思いますが、私が気になるのはその効果です。一時的な流行に乗って効果を実感できない投資が続けば、次第に企業の関心は薄れます。どのビジネスに於いても重要と言える「顧客との対話」と「アドボカシー」。それらを実現するソーシャルメディアマーケティングに取り組む前に企業にとって必要な事を考えてみました。
目的・目標は明確か?
多くの企業がソーシャルメディアを「課題」として考えている事で、スキーム自体は(明確な戦略が無くても)ベンダーにとって非常に売りやすいものです。ブロガーを使う、Twitterを使う、という「手法」だけが先行し、明確な目的や目標、その測定方法などは定義されていない場合が多いのではないでしょうか?単発のプロモーションとしては非常にリーチの低いものも多く、何かの事業課題の解決に役立っているとは思えません。
多くの場合、「評判の改善」が漠然とした目標として定義されているでしょう。しかし、その現状を正確に把握しなければ、どのように改善を行うべきかも分かりません。キャンペーンやインタラクティブなコンテンツをフックに、レレバンシーの低い少数の消費者にブランドを語らせても販売効果に結びつくとは思えません。先ずは何故、どのようにソーシャルメディアを使うのか?そしてどれほどの改善を見込み、どれほどの投資を認めるのか?明確な答えが無ければ、その投資は無駄になる可能性が高いでしょう。
ファン(支持者)を囲い込んでいるか?
ソーシャルメディアでブランドの発言に興味を持ち、その発言を拡散してくれるのはブランドを推薦する意志のある支持者くらいです。いくら手法が面白いからと言って、興味の無いブランドの情報を知り合いに勧める事はないでしょう。本格的にソーシャルメディアマーケティングに取り組む前に、先ずはそのブランドの活動を支えてくれる支持者の囲い込みが必要です。
企業がダイレクトマーケティングを行う顧客データベースには多くの支持者が含まれており、NPSの測定によって簡単にセグメントすることができます。少数のコンテンツ(コメント、レビューなど)提供者が多くの閲覧者に影響を及ぼすソーシャルメディアでは、語り手を選ぶことが最も重要と言えるでしょう。
企業がソーシャルメディアへと発信する情報が多くの支持者によって受け取られ、拡散されればその情報の流れは必ず大きく、そしてポジティブなものになります。ブランドを「絶対勧める」(NPS 10)、何万人もの顧客と直接対話を行う事が出来れば、マスプロダクトの売上にも無視出来ない影響を及ぼすでしょう。先ずは語る前に、語る相手を見つけるべきだと思います。
支持者のソーシャルテクノグラフィクスを把握しているか?
いくら支持者を集めても、彼らが肝心のソーシャルメディアを活用していなければ効果は見込めません。NPSを取得すると同時に、支持者がどのようなソーシャルメディアを、どれほどの積極性で活用しているかを把握しましょう。活用しているサービスなどを基にコンタクトを最適化することも可能ですし、活用の傾向を基に企画を行うことも可能です。支持者のソーシャルテクノグラフィクスを正確に把握することで、特定のサイトやサービスにフォーカスした評判の改善も行う事が可能になります。
ファンを刺激するコミュニケーションは明確か?
ファンがどのような理由でブランドを支持しているかを把握すれば、目的を達成するために必要なコミュニケーションも分かるはずです。ブランドや商品がどのように消費者の生活を豊かにしているのか。消費者の代わりに実現していることは何なのか。ファンに語って欲しいメッセージを決め、それを可能にするコミュニケーションを考えましょう。サンプリングが可能な場合は支持者を通じて行う事も考えられます。ファンに対して独占的な演出を行い、ブランドと「ミッションを共有している」と感じさせることも重要です。
ファンの声の収集、活用方法は決まっているか?
消費者の声は広告の中でも最も信頼性が高く、購買に影響を与えます。支持者が発するポジティブなコメントをどのように収集するのか?二次利用(及びパーミッションの取得)はどのように行うのか?少数のコメントが最大の影響力を発揮できるよう、その活用、拡散方法は事前に決めておきましょう。
ネガティブなコメントへの対応方法は決まっているか?
ソーシャルメディア上でのオープンなコミュニケーションにはブランドに対してネガティブな意見を持ったユーザーが参加してくる可能性もあります。想定されるネガティブコメントや返事の内容、返事を行う際の基準などを事前に決めておく必要があります。
拡散力のある公式ソーシャルメディアチャネル
影響力のある支持者を得ても、コミュニケーションのチャネルに拡散力が無ければ効果は見込めません。支持者が多くの消費者へとメッセージを拡散すうためには引用、転載、参照を行い易いチャネルで情報を提供する必要があります。公式ブログやTwitterアカウント、Youtubeチャンネルなど、支持者が使い易いフォーマットで情報を提供しましょう。
ソーシャルメディアマーケティングはソーシャルメディアとCRMを活用したPR活動と言っても良いでしょう。先進的なメディアを使って、無理に直接的に一般消費者の興味やロイヤルティを向上させる活動ではありあません。長期的に支持者を集め、関係を築くことで確実にアドボカシーを増やし、評判を向上させる活動です。サービスプロバイダにも多くの知識が必要ですが、なによりクライアント側のコミットメントが必要です。単発のプロモーションでいきなり飛び込むような事はせず、先ずは顧客との関係構築へと目を向けましょう。
January 1, 2010 10:57 AM

散々人に勧めておきながら、いまさら読み終えました。確かに話題になるだけあって色々と気付かせられる本でした。ソーシャルメディアという大きなテーマを中心に色々なトピックをカバーするのでコメントもかなりランダムになりますが、雑感を記事にしておきます。
ソーシャルメディアを通じたマーケティングリサーチ
少し前からサイトの企画をまとめる前にリサーチは行っていますが、その重要性を再認識できました。市場調査ではバイアスが取り除けず、本当のインサイトを得ることは出来ません。しかし、ソーシャルメディアの積極的な活用が一般化した事により、インターネットには見える形で消費者の本音が溢れています。ソーシャルメディアの活用は今後、企業のマーケティング活動の要になるでしょう。また、消費者とエンゲージする事でより詳細なインサイトを直接得る事が可能となり、企業のイノベーションが加速するという点は興味深いです。企業は必ず何らかの形で市場を知り、商品やサービスを開発し、競合より速いイノベーションを求めます。そのために膨大な費用をかける割には消費者との直接的な対話を恐れ、急速な変革には抵抗があります。その矛盾には「競合のリテラシーの低さから来る安心感」のようなものがあるかも知れませんが、このような本が一年も前から話題になっている時点で安心している場合ではないでしょう。この本に書いてある通り、「イノベーションを通じて一流を目指す」という仕事は誰もが意識しなければいけない事だと思いました。
ベンチマークを探している場合ではない
この本にはたくさんの海外での成功事例が記載されています。もちろんその幾つかはそれらの企業により日本へと転用されていますが、大半は失敗に終わっているようです。グローバル企業が本国で消費者とエンゲージし、製品やサービス、そのプロモーション方法まで改善したにも関わらず、それを各国のローカルマーケットに落とし込めてはいないのです。消費者がソーシャルメディアに求める事を調査し、対話の場を提供する事をグローバルな戦略として推進する事は素晴らしい事ですが、各国の手法はその国々の調査結果やソーシャルメディアの特性を基に個別に立案しなければいけません。どのようなグローバルなソリューションにもローカルなスキームが必要なのです。成功事例もまだ少なく、各企業が消費者との関わり方を模索している中、他社の活動をベンチマークしている場合ではありません。まずは自社とその消費者を取り巻く状況を調査するべきでしょう。バイアスの多い市場調査や単なるアイディアをベースにした広告やPRへの高額な投資を続ける前に、消費者とのコミュニケーションを見直しましょう。
消費者と企業の境目が無い新たな経営ビジョン
グランズウェルで最も面白いと思ったのが将来的な企業の在り方に対するビジョンでした。そこにはメディアという企業と消費者の境目になるようなものは無く、直接的な対話から需要と供給が最適化される消費経済のエコシステム(生態系)が提示されていました。マーケターにとっては脅威でもあり、理想でもあるようなシステムです。今までは「消費者のニーズを読み取る」というスキルが必要とされてきた一方で、今後は「消費者と正しく対話する」スキルが求められていくのでしょう。私の中でマーケターという職業自体をを再定義されてしまいました。
その他にもキャンペーンやECサイトのコンバージョン率アップに役立てられるたくさんのティップス、CGAの新しい利用価値を感じさせる内容や、日本国内で展開可能な新たなサービスのヒントなど、たくさんの知識が詰まっていました。WEBやソーシャルメディアに関連する人だけでなく、マーケティング、広報、経営者の方々にも(英語版もあるので外国人経営者の方々も!)是非読んで頂きたい一冊です。
December 26, 2009 1:22 AM
ソーシャルメディアリサーチを始めてブログが予想以上に広告で汚染されていると実感しました(結果ブログ記事はあまりリサーチに含めていません)。なんだか商品を紹介する記事は全て広告に見えてしまいます。実際、ブログプロモーションを行う企業は現在2,000以上と言われ、日本国内の200万件ほどのアクティブなブログの大半がなんらかの広告を掲載しています。消費者の口コミを装い、報酬や商品の無償提供を受けて書かれた記事は広告であると明示しなければアメリカでは高額な罰金が科さられるほど。ブログを通じて発信される広告は徐々にその居場所を失いつつあるように思います。
私たちもブロガーを巻き込んだプロモーションを行ってきましたが、規格にはブロガーの「自主的」な参加を重視してきました。消費者を欺く広告に効果は無いと思うと同時に、信頼される消費者発信広告の在り方を模索し続けていました。しかし、今ではその需要自体も減ってきたようと思います。
考えてみればこれは広告の進化(衰退?)なのでしょう。企業がメディアから直接消費者に語りかける純広告から、コンテンツ内に編集された記事広告やアドバトリアル、PR、そして消費者同士が広告を行うCGA(消費者発信広告)へ。この流れを見る限り、次の広告の形は無いように思えます。CGAが最後の広告の形だとしたら、もう少し大切に扱うべきだったのかもしれません。
消費を左右する消費者間の情報から広告が排除され、企業とのコミュニケーションは消費者側が主導権を握るようになりつつあります。広告という形で消費者とのつながりを「買っていた」企業は一方的な発信からは対照的に消費者とエンゲージする事が求められるようになるでしょう。総務省の情報流通センサスにもあるように、今や流通情報量は消費可能な情報量を大きく上回っています。流通情報量の増加に伴い起床時間のメディア接触時間は奪われ、消費者は広告に対し消極的になります。積極的に情報を求める必要は無く、他の消費者からフィードされる情報を取捨選択するだけで十分になってしまうのです。
アメリカではほとんどの企業が既にこの問題に直面し、FacebookやTwitterに積極的に参入しています。日本でも企業のソーシャルメディアプレゼンスが売上を左右する時代はそう遠くはないかもしれません。